お題『もう一つの物語』
あまり好きではない乙女ゲームの『悪役令嬢』に転生した。
ある日とつぜん思考が降りてきて、前世の記憶が走馬灯のように私の脳内をかけめぐったからだ。
この世界はゲームの世界で、私は主人公の恋路を邪魔する悪役としてたびたびゲームに登場する。
絵柄が好みだから買ったゲームだ。かわいいヒロインに、彼女をかこむ周囲のイケメンたち。だが、いざゲームをやってみるとシナリオはひどかった。主人公は主体性がなく、ただ立っているだけで周囲から攻略相手が寄ってくる。全員、そんな主人公に甘い。
私は、そんな主人公に苦言を呈したり、私の婚約者である攻略相手にも進言したりしている。だが、ゲーム内ではそれを「主人公イビリ」と呼ばれる有様。プレイしていた時、この悪役令嬢だけはマトモだったなとはっきり思い出す。
ゲームの通りに行くと、これから私は、女にだらしない婚約者に言い寄られる主人公に「あいつはやめたほうがいい」と言いに行っただけなのに、急に私が悪役にされて、いろいろあって追放されるのだ。
なんとしてでも、主人公や婚約者、他の攻略キャラとされてる男とちゃんと話をしないといけない。私がこのゲームのもう一つの話を作ろう。そう誓ったのだった。
10/29/2024, 11:41:53 PM