金木犀の香りがすると
そろそろだな とおもう
僕が手塩にかけた 美しい子たち
あの奥さんに買われる
部屋に飾るんだって
部屋はサンルームになっていて
日当たりがとても良い
昼は暑すぎるくらい 陽が当たって
夜は冷えるから 毛布で包んであげて
その子たちが生きている間中
ドビュッシーの月の光を流してやるんだって
僕は少し心配になる
今まで買われて行った子たち
その最期は奥さん どうしたのかなって
僕は街外れの小さな花屋で働いている
最近 その奥さんの噂を聞いた
ベジタリアンなんだって
きちがいにもほどがある
奥さんにも
あの子たちの声が聴こえるとおもっていたから
食べられる子たちの声が聴こえないのか
あんな断末魔
僕なら耐えられない
花屋の仕事だって
彼女たちの苦しい声に耐えながらやってるんだ
そろそろ金木犀の香りがしてきただろう
ほら あの奥さんが来た
はじまりはいつも
金木犀の香りがしてきたら なんだ
彼女たちのおわりが
いつも気になるんだよ
10/21/2022, 5:54:57 AM