るな

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愛を注いで
      作者新田るな
俺の友達に病気の子がいる。その子の瞳はアレキサンドライトのような綺麗な色。そして一番のチャームポイントは高級感のある小さな微笑み。俺はその子が大好きだ。
だが、ある日の出来事で俺はその心を崩した。いつものように彼女のお見舞いに向かった。それで、病室に行って笑顔で花束を持って彼女に会おうとした。その時
「僕…雪菜と一緒にいて本当にいいのかな?」
と心配そうに可愛らしい男の声が聞こえた。
「歩。心配しないで。私たちは許嫁なんだから、絶対に結ばれる存在なの。歩と私はいい夫婦になれるよ。」
いつもの雪菜の声だ。
俺は固まった。俺の体から魂が抜けたような感覚。
そうだよな。雪菜はとても美人さんなんだ。雪菜のことが好きな奴だって他にもたくさんいる俺だけじゃない。でも…とっても悔しい。試合で最後にホームランが打たれた気分だ。それに許嫁…。腹が立つ。なんで雪菜は俺に許嫁なんだって言わなかったんだ!
「ねぇねぇ歩聞いて。毎日ね私だけのためにいっつも花束を持って私のことを心配してくれる人がいるの。私ね、嬉しいの。お母さんに愛を注がれているみたいで居心地がいいの。
だからね歩。私、歩と結婚したくないの。許嫁だけどそれって破棄できるのかな?破棄できたら破棄しといてくれないかな?あ、そしてお父さんにも伝えてくれる?」
優しいソプラノが病室全体に響き渡った。
「な、何言ってるの?雪菜!僕たち許嫁だよ。破棄なんてできるわけないじゃん!それに!さっき雪菜、絶対に結ばれる存在だって言ったじゃないか!」
怒っているとすぐにわかる隠れ怒り声。
「うん。確かに言ったね。でも、それも全部破棄。私が言ったことぜ〜んぶ破棄。破棄できなくても、私は逃げる。歩たちが追ってこれないスピードで絶対に逃げる。かっこいいでしょ」
少し狂ったかのような喋り方いつもの雪菜ではない。
「ねぇ、あなたそこにいるんでしょ。わかってるよ。出てきて私の元カレにご紹介するから。」
と俺は言われた。固まっていたはずの体はすぐに和らげ動いた
俺は、その歩っていう人の後ろに立った。
「あ、今日も花束持ってきてくれたの。ありがとう。いつも私に愛を注いでくれてありがとう。」
俺は嬉しくてたまらなくて涙目になってしまった。
「どういうことだよ!雪菜!たかがこんな奴に惚れてしまったのか!お前は目が腐っちまったのか!」
さっきの可愛らしい男とは一変の怖い男になっていた。
でも、雪菜は冷静にチャームポイントの高級感のある微笑みをしながら
「歩。ごめんね。いきなりここで手放すのもよくないけど、私は彼に惚れてしまったの。彼は歩とは違って愛という見えない大切なものをこんな私に毎日毎日注いでくれたの。」
嬉しい。この一言しか頭に上らない。
そして、男は悔しそうに頭を抱えながからトコトコと歩いて帰ってった。俺と雪菜は四年後に結婚をして、赤ちゃんが誕生した赤ちゃんも雪菜と同じで生まれつき病気をもっていたけど俺は毎日欠かさずに愛を注いだ。

12/14/2023, 10:01:56 AM