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「赤、緑、青と言えば?」
 黒板にチョークを走らせて振り返ると、ふたりの少年が元気に手を挙げた。

「光の三原色!」
「BTB溶液!」
「BTB溶液は違うだろ。黄、緑、青だよ」
「ふっ、無知めが。強酸だとBTB溶液は赤くなるんだぜ」
「何……しかし、光の三原色の方がお題に合った回答だろう。BTB溶液は斜め上に捻りすぎだ」
「光の三原色なんて、単純すぎるだろう」
「いや、BTB溶液の方が知識をひけらかしているようで、鼻につく」
「先生の前で、いい格好をしたいんだ。知識をひけらかして、何が悪い!」

 少年たちが私の前で言い争いをしている。
 やめて、私のために争わないで。
 そう言いたかったけれど、言葉が出なかった。だって、BTB溶液の色なんて忘れていた。私が先生であることが、恥ずかしい。

 でも、ここは科学教室じゃなく、お絵描き教室だから。思わず筆をぎゅっと握りしめる。

「君たちには素敵な才能があるんだね」

 引きつった笑顔で、私はそう言うしかなかった。

9/10/2025, 1:26:01 PM