「あなたは誰?」
嘘だと思ってた。貴方は神様から、記憶を奪われてしまったって。
家族のことも、自分のこともある程度は覚えているのに、私と共にすごした学校生活のことだけ、ぽっかりと忘れてしまっているらしい。
でも、それはもしかしたら貴方にとっては、思い出したくもない、忘れても良かった思い出かもしれない。
だから、私は泣かないし、貴方の前で悲しい顔もしない。
また、最初からやり直そう。
「こんにちは、よかったら私と、友達にならない?」
虐められていた貴方、それを止められなかった私。
ある日、貴方は屋上から飛び降りた。
一命は取りとりとめたけれど、学校で過ごしていた貴方という存在は死んでしまった。
でも、きっとそれでよかった。
貴方はそれを望んでいた。
「うん、ちょうど、暇してたの」
そういう貴方の手には、昔っから何度も読み返してた小説が握られていた。
「名前は?あなたは、誰?」
もう一度、貴方は私に問う。
私は、少しカッコつけるように、あの時の、貴方に初めて話しかけた時とおなじ自己紹介をした。
「その小説の、著者です」
2/19/2025, 1:12:00 PM