夏の雨

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「今までありがとうございました。」
「いいえ、こちらこそありがとう。」
深々と頭を下げる私を、微笑みながら先生の『元』アシスタントの人が頭を横に振る。
「ちなみに、私の目の色分かるよね?」
「はい。綺麗な水色です。」
そう言うと、先生は頬を緩ませた。
今日は卒業式。私は元々色が分からなかったけれど、先生のアシスタントさんに助けられ、今は色が分かるようになり、アシスタントは先生になった。
くだらない話をしていたら、突然先生が真面目な顔になって尋ねた。
「色って、必要だと思う?」
色は必要、か……前の私は答えられなかったな。
「色……は、必ずしも必要ではないとは思います。でも、色があるからこそ人生が楽しいんじゃないかなと思います。……料理でいう、調味料みたいなものだとですかね。絶対的に必要ではないけれど、入れてみたら美味しくなるのと同じで、入れたら人生に彩りを与えるので……」
答え終わると、先生は少しだけ目を潤ませながら頭を撫でてきた。
「……変わったわね。強くなった。貴方はもう、大丈夫よ。心配してたけれど…全然平気だったみたい。」
「変われたのは先生のおかげです。ありがとうございます。」
「私は調味料みたいなものよ。ちょっとした、ね。」
そういったあと、「ふふっ」と口角をあげ、私の背中を押した。
「最後に写真撮りましょ」
「はい!」
桜が咲き誇る中、私と先生は笑顔でピースをした。

#カラフル
「無色の世界」の続きです。なんか書いてて泣けてきました。私にはこのような青春はないと…。
青春したぁぁぁい!!!(((((

5/1/2023, 11:16:20 AM