―窓から見える景色―
真四角な部屋に、
白くて皺のひとつもない無機質なベッド、
簡単な作りのアイアン製の机、
キャスターの付いた回転椅子、
本がぎっしりと詰め込まれた本棚。
それぞれの家具にあまり装飾がなく、
壁紙も床も在り来りなもの。
そんな至ってシンプルな部屋にあなた1人。
部屋を出ようとは思わないけど、
何もすることがなく、
その部屋で唯一輝いて見えた窓に近寄る。
カーテンはついていなかった。
窓枠に手をかけ、窓越しに外の景色を見る。
なんと美しい景色なんでしょう。
思わず零れた溜息。
このお話通りに想像してみてください。
さて、窓から見える景色はどんなものでしたか。
緑が心地いい朝の景色ですか。
青く輝く海の昼の景色ですか。
黒色の都会の夜の景色ですか。
人それぞれでいいと思います。
それではいくつか文章を付け足しましょう。
―本がぎっしりと詰め込まれた本棚。
そして壁にかかるのは
この部屋に最も不似合いな、監視カメラの数々。
それぞれの家具にあまり装飾がなく、
壁紙も床も在り来りなもの。
壁に同化するかのように白いドアには、
小さく真四角な窓があり、
内側から外せない鍵が外からかかっていた。
そんな至ってシンプルな部屋にあなた1人。―
―なんと美しい景色なんでしょう。
満足して、景色からピントを外すと、
ピントがあったのは窓につけられた鉄の棒。
所謂、鉄格子。
思わず零れた溜息。―
美しい景色なんて気にならなくなりましたね。
―これが夢を壊されてしまったということです。
9/25/2022, 2:01:43 PM