千歳緑

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たとえ間違いだったとしても




 たった一滴。
 それだけで絶命することができる死の雫。
 それが入れられた杯の中身を。

 女は、何の躊躇いもなく、飲み干した。



 そういうゲームだ。
 二つの杯。当たれば賞金、外れたら死。
 ただし選ぶのは、飲む役である女ではない。

「わかっているのか?! 俺が失敗したら死ぬんだぞ」

「それが何?」

 選ぶ役の男は女に詰め寄った。
 杯の中の毒は遅効性らしく、すぐに効果は出ない。
 女のあまりの潔さに、失敗しても死なない筈の男が動揺している。

「良いのよ、間違っていても」

「良いのよわけあるか‼︎ 何で…っ」

「貴方が選んだから」

 女は笑った。あと数分の命かもしれないのに。

「貴方を信じた、命を賭けて。ただそれだけよ」

 男は絶句した。かける言葉が見つからなかった。

「それに…」

 女の、笑みが変わった。



「これで私が死んだら、貴方は一生私を忘れられないでしょう?」



 金より命より、価値のある選択だった。
 だから、躊躇わなかった。
 むしろこんな機会を与えてくれたことに感謝したいほどだ。
 普通の、間違えのない、正しい生き方なら訪れることのない機会。

 女は間違いなく、最も欲しかったモノが手に入る。
 この男の脳裏に、永遠に巣食うことができる。



「このゲーム、私の勝ちよ」



 たとえ間違いだったとしても、ね。

4/22/2026, 1:46:29 PM