「変な名前」
何が興味を惹いたのか、名前欄に書かれた文字を辿った彼女は露骨に嫌な声を出した。
「そう?」
「女の子の大敵じゃない」
言われ、先程記入したばかりの自身の名前を見る。ありきたりな名字の後に続く自身の名前を見て、ああ、とその端を払った。
「ひさし」
「え」
「僕の名前。『ひざし』じゃなくて『ひさし』」
「…………ごめんなさい」
偽りの濁点を失い女の子の敵から生活の助っ人に変わった僕に、いつもお世話になっております、と彼女は申し訳なさそうに深々と頭を下げた。
/日差し
7/2/2023, 12:35:46 PM