【今日の心模様】
物心ついた時には、感情の色が見えていた。嬉しい時にはオレンジ色、悲しい時には青色、怒っている時は赤色で、リラックスしている時には緑色。俺の視界はいつだって鮮やかで、溢れんばかりの色に溢れていた。
あまりにも的確に相手の感情を汲み取るものだから、「まるで心が見えてるみたいだね」なんて、周りからはよく言われたものだった。だけど。
「君の意見を教えてほしいな」
くるりとペンを回しながら俺を促した君の感情だけは、何故だか全く見えない。君の心はいつも無色透明で、まるで流れていく水のように静謐だ。今の発言が苛立ちから出たものなのか、それともただ純粋に俺の意見を知りたがっているだけなのか、それすらも俺には分からなかった。
君の心を知りたいなんて思うのは、人生で初めてだ。嫌われてはいないかと不安になって、俺のことを好ましく感じてくれていれば良いと願う。自分の感情がグシャグシャに乱される毎日が、怖いけれど面白くて仕方がない。
はたして君の今日の心模様は、どんな色をしているんだろう。透き通った君の心臓を見つめながら、そんなことを夢想した。
4/23/2023, 12:07:47 PM