——あいつを頼む。
そんな風に言われてしまってから、僕の喉の奥にはいつも何かが引っかかっている。
大嫌いだった彼の言葉が、頭の中にこびりついてしまって離れない。ライバルが減ったと喜ぶような気持ちでもいられない。本当に大迷惑だ。
もっと頼るべき人間なんて他にもいただろう。僕とは違い、彼は交友範囲だって広いんだから。
「なんで僕だったんだよ」
だから今日も僕は一人病院を目指しながら、悪態を吐くような気持ちで独りごちる。
「彼女がそんなに心配なら、簡単に死ぬなよな」
そうして死にゆく彼には浴びせられない言葉を、虚空に向かって放つのだ。
5/23/2023, 11:01:44 AM