わさび

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お題:「いつまでも捨てられないもの」


いつぶりだろうか。
このタンスを開くのは。

えぇっと、最後に開いたのはたしか

「中学2年?いや、3年の夏ぐらいか、」

ぶつぶつと漏れた音が、窓から流れる蝉の声に被さる。

ガラ
ガラ

「おぉ...」

小学校の頃よく手紙や日記を交換していた名残があった。

「よくやったよなぁ」


-ジリジリジリジリジリ
-ミーンミンミンミーン
-ぶおーーーーーーーー


扇風機に紙が飛ばされそうになりながら、
懐かしさを辿る。

「酷い字」

小学校でいつからかやらなくなったそれを、
つい中学まで見返していたのだ。
いつから、やらなくなってしまったんだっけ。

“大人”と言う文字がチラつく。

昔はキラキラしていたその言葉も、
今や泥に塗れている。


ため息。


一枚しか無いお気に入りの便箋

溜まってしまったお気に入りの封筒

お気に入りばっかのシール帳

微妙なのばっか残ったシール

パンパンのチャック付きファイル

案外薄いプロフ帳

デコられすぎた交換日記ノート

6ページ目以降が白紙のノート



-ジリジリジリジリジリ
-ミーンミンミンミーン
-ぶおーーーーーーーー



「棺桶に入れてくれって書こうかな」



ふと、最後の一枚を手に取った。

8/18/2024, 2:29:34 PM