欠陥品

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【ベルの音】

皆さんはクリスマスイヴ、クリスマス当日はどうお過ごしでしょうか?

私はクリスマスを友人と過ごすわけでもケーキを食べるでもなく、ただただベッドの上でじっ……と静かにクリスマスが終わるのを待っています。

昔……というか小さい頃はサンタさんが来るのを楽しみに待っていたり、ケーキを食べたりとそれはもうクリスマスを満喫していましたよ。

そうですね……。クリスマスが苦手になってしまったのは、私が21歳フリーターで恋人もおらずバイトに明け暮れていた時の事です。

ーー

12月24日夜、ケーキ店の短期バイトを終え家に帰る。

買ってきた缶ビールを開け、貰ったケーキを食べる。

もぐもぐとケーキを食べながら、ふと頭にある考えが浮かんだ。

(オカルト板で一人かくれんぼ実況してる人がいたなぁ……
暇だし俺もやってみようかな)

押し入れから何かでもらった変なキャラクターのぬいぐるみを引っ張り出す。

パソコンを付けて検索をする
『ひとりかくれんぼ 手順』

「以外とやる事多いな……」
ぬいぐるみのお腹を裂き米と髪の毛を詰める。

お腹を縫い合わせぐるぐると糸を巻き人形の準備は完了した。

現在時刻は22時すぎ。
コンビニ飯を食べて、シャワーを浴びる。

シャワーを浴びるついでに水も貯めておく。

ーーーー

ネットサーフィンをしていたらいつの間にか2:30。

急いで塩水を作る。
……少し恐怖心もあるため盛塩も4つ用意した。

盛塩を隠れる予定の押し入れの四隅に置き、塩水と時計も一緒に置く。

午前3時。
「最初の鬼は俺だ」と3回唱え浴室に貯めた水に人形を沈める。

家の明かりを全て消しテレビだけをつけ、砂嵐が出ている状態にし、目を瞑って10秒数える。

刃物を持って風呂場に行き、「五郎(ぬいぐるみ)見つけた」と言って刺す。
「次は五郎が鬼」と3回唱える。

俺は急いで押し入れに隠れる。



……
………

まぁ当然、何事もなく30分。

1時間、と過ぎていく。

(あと30分待って何もなければ終わりにしようかな……)

そう考えていた時のこと。

ピンポーン

インターホンが鳴る。

(は?今何時だと思ってんだ、いやいや気のせいだよな。
流石にこの時間に鳴らすやつなんていないよな)

ピンポーン

2回目が鳴る。

(いや、これは本当に鳴ってる……?
仕方がない取り敢えずひとりかくれんぼは終わりにするか)

少しだけ開けておいた隙間から部屋の様子を見る。

別にぬいぐるみが動いているとか物が浮いてるなんて事はないので塩水を口に含み風呂場に行く。

ぬいぐるみにコップの塩水と含んでいた塩水をかけ

「俺の勝ち」と3回唱える。

(これでひとりかくれんぼは終わり。
…インターホンは?
ひとりかくれんぼの影響なのか酔っ払いか何かが来てるのか……)

シーーーン……

ひとりかくれんぼの影響だったのかな、と思った矢先。

ドンドンドンドン!!!!

激しくドアが叩かれる。

(ひとりかくれんぼは終わらせたから多分酔っ払いとかだろうな……)

ゆっくり息を殺してドアスコープを覗く。

何も見えない。

「んだよ……」

ピンポーン

「ッッ!!」

人の気配は無かった。

もう一度、息を殺して覗く。

真っ赤な服に真っ赤な帽子。

白い大きな袋を持ってる男……。

袋には赤黒い液が染み出ている。

(……これ、人間じゃねぇな)

ゆっくり、物音をたてないようにドアから離れる。

キッチンに置いたままの塩に手を伸ばし取ろうとした時……

ガシャンッ!!

コップを落としてしまった。

ドンドンドンドンッ

ガチャガチャガチャッ

(気付かれた!!!!)

塩を掴み一目散に押し入れに入る。

(大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫。

鍵は閉まっていたしチェーンもかかってた……!!

だから大丈夫)

ガチャリ

ギィー……

(!?
嘘だろ)

扉の間音と足音。そして重い何かを引き摺る音、鈍い鈴の音が聞こえる。

パニックだった。

鍵もチェーンも閉まっていたはずなのにどうして部屋に入ってきているのか。

とんでもない威圧感。

赤い服の男は部屋を一通り周ったと思ったら、ドアやクローゼットを開け本格的に俺を探し始めた。

(クソッ!!!!
そんな知能あるのかよ!!!!
早くどこかに行け………!!!)

……ズッズッ

近付いてくる音がする。

襖に手をかけ動かないように抑える。

ガタガタッッ!!

(グッ……………!!
力強すぎんだろ……!!)

ガンッ!!

勢い良く襖が開いた。

ーーーそこから先、俺の記憶はない。


目が覚めた時には、もうその男はいなかった。

玄関を見てもドアのチェーン、鍵はしっかりかかっていた。

……じゃあ、あの事は夢だったのか?

……………いや、違う。

俺は確かに押し入れの中で目が覚めたし、襖も開いていた。

グラスも割れている。

そして部屋に付いている赤い線。
これは袋から滲み出ていたものだろう……。

ふと盛塩を見てみると真っ黒に変色していた。

なにからが夢でどこからか現実だったのか。

俺はもう考えるのを辞めた。

ーーー

それから毎年、同じ時間にドアが叩かれ、鈍い鈴の音が頭に鳴り響くようになった。

どこに引っ越しても必ず。

流石にと3回目の後にはお祓いに行った。

お清めをしてもらいお守りと御札を貰ったのだが、お坊さんいわく、俺には何も憑いていないらしい。

それでも毎年ドアは叩かれ、鈍い鈴の音が鳴り響く。

俺は息を殺してじっと、貰ったお守りを握りしめ何かが居なくなるのを待っている。

12/20/2024, 7:58:09 PM