胸の鼓動の数というのは決まっていて、それがゼロになると人は死ぬらしい。
それが本当ならば、運動している人ほど寿命は短くなるし、緊張しやすい人の寿命だって短くなるはず。長生きしたければ、穏やかに生活をしなければいけなくなる。元々、私に長生きの願望はないが、学校の先生がそんなことを話していたせいでふと気になったのだ。
だが、今の私は心穏やかに生活するなんて到底できそうにない。原因はサッカー部の幼馴染だ。今まで意識してこなかったのに、先日急に告白してきた。
「部活の大会でレギュラーに選ばれたら、付き合ってくれ」と。
一年生なのに、レギュラーに選ばれるわけなんてないと言い聞かせていた。だが、実力は誰よりもずば抜けていることもわかっていた。マネージャーを務めている私でも、彼が先輩を差し置いてレギュラーに選ばれる可能性があることは十分にわかっていた。そのせいで、メンバー発表の日までずっと意識してしまっているのだ。
目が合っただけで笑いかけてくる。点数を決めると真っ先に私に手を振ってくる。他の人たちにからかわれても堂々と振り向かせたいんだと言っている。寿命が短くなっているのを感じながら、日々を過ごしていた。
そして、試合メンバー発表の日。背番号順に発表されていき、ついに最後の番号が言われる時。幼馴染の名前が呼ばれた。彼は小さくガッツポーズをして、私に向けて小さくピースしてきた。
帰り道、幼馴染と会う前に早く帰ってしまおうと急いだが、待ち伏せされていた。
「付き合ってくれるよな?」
あんなに幼くて可愛らしい顔をしていた幼馴染はどこにもいなくて。しっかりと男の顔になっていた。凛々しくて、力強い目に、この人になら寿命を短くされてもいいかもしれないと思った。
9/9/2023, 8:17:01 AM