今一番ほしいもの
『ねぇねぇ!お母さん!!あのくまさんの人形が欲しい!!』
「ダメよ、こないだも人形買ったじゃない」
『ヤダヤダヤダ!!あれが欲しいの!!』
「どうせすぐ遊ばなくなるんだから!」
『遊ぶもん遊ぶもん!!』
「もぉ、じゃあ、今度のテストで100点をとったらね」
『…!!やった!ありがとう!お母さん!!』
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『…あぁ、このお店、閉店しちゃうのか…』
仕事の帰り、小さい頃、人形が欲しいと母親にねだった思い出があるお店の前を通った。
母親は5年前に病死、私も今は、上司からのパワハラ、同僚からのセクハラに精神が削られていた
『…お母さんに、…会いたいな…』
私は昔から、人の願いを断れない性格だった、だから、無理をしている時に、必ず母親が、
「こら!!またそんなに隈をつくって!!今日はお母さん連絡してあげるから、学校を休みなさい」
と、怒って、心配してくれた。
『…今の、私を見たら、お母さん…怒ってくれるかな…泣』
あぁ、欲しい。お母さんの怒って心配してくれる声が。
『…っ、泣』
ずるると、お店の前に座ってしまった。
〝あの、大丈夫ですか!?〟
『…、??』
〝立てます…?〟
『あぁ、はい、ごめんなさい…』
〝ハンカチ使って下さい〟
『…ありがとうございます…』
〝覚えてるかな、みおちゃん〟
『っ、なんで私の名前を?、』
〝俺、近所に住んでた、なお、だよ〟
『!なおくん、?』
〝そうそう!!笑久しぶり〟
『久しぶり…』
〝俺、今このおもちゃ屋さんで働いてたんだよね、もうなくなっちゃうけど。あ、おばさん元気??〟
『…、5年前に病気で…』
〝…そっか、ごめん、〟
『んーん、ごめんね。私もう行くね、ハンカチ…』
〝あぁ!貰ってよ、それ、本当は学生の時、みおちゃんの誕生日プレゼント出渡す予定だったのだから、笑〟
『え、??』
〝勇気出なくてさー!!結局そのまんま、卒業しちゃって〟
『そうなんだ、ありがとう…』
〝俺さ、おばさんみたいに器用じゃないから、本当かわからないけど、もし、しんどいなら、逃げてもいいと思う。実際、俺ももうすぐ無職だし!俺は泣いてる顔のみおちゃんより、笑ってる顔のみおちゃんの方が好きだな!〟
『…っ泣』
〝しんどいんだよね、誰も頼れなかったんだよね、頑張ったね、休もう。俺が会社に辞めるって言ってあげようか?あ、部外者が入ったら、もしかして不法侵入???〟
『…ふ、ふふ、』
〝!やっと笑ったね〟
『ありがとう、なおくん。明日、辞表出すよ』
〝うん〟
『辞表出したら、また会ってくれる?』
〝もち!!会お!!!!〟
『うん、笑』
ピロンと、LINEを交換して、お礼を言って、バイバイをした
その後会社をやることができ、なおくんとも週に一回、会って、一緒に就活の話をした。
そして、なおくんと再開して、3年、私達は結婚します。
『お母さん、私、お母さんからのおめでとうの言葉が欲しかったな。でもね、もう大丈夫だよ、ひとりじゃないから、なおくんがいるもの』
〝へへ、俺、みおちゃんのこと大切にするんで!!任せてください!!〟
『お母さん、また来るよ。私を産んでくれて、ありがとう』
「結婚おめでとう!!」
『!!ふふ、ありがとう、お母さん』
END、今一番ほしいもの お母さんの言葉
7/21/2023, 10:40:59 AM