「あの空の向こうに」
子供の頃は、何かに似ている雲の形を面白がっていた。
くまさん、ひつじさん、ソフトクリーム、ぎょうざ、サンタさんのおひげ。
少し大きくなって、宇宙の存在を知った。
「この空の向こうの、ずっとずっと向こうに宇宙があるんだ……」
そう思うようになった。
社会人になると、空を見る余裕が無くなってしまった。
ただでさえ慣れない都会でのひとり暮らし。
その上、いわゆるブラック企業に就職してしまったのだ。
身体も心も傷ついて、仕事を辞めて実家に戻ってからは、日中の空は恨めしいものに変わり……
ようやく家事が出来るまで立ち直った頃。
このあと晴れ続けるのか、洗濯物を夕方まで外に出しておいても大丈夫なのか、そんなことが気になるようになった。
そして今、再び雲の形が何に見えるかを楽しんでいる。
この空は何処かにつながっているということ。
当たり前なのに不思議だと感じる。
身体は土に、魂は空に還る──などと言うが、この先、年を重ねたとき、そして最期の時が近づくとき、どんなことを思って私は空に手を伸ばすのだろう。
────空を見上げて心に浮かんだこと
7/16/2024, 3:34:14 PM