『霜振る朝』
「くしゅん!」
通学路でくしゃみをする。
目を閉じて、開けた先に白く変色した空気が残っている。
「おや、大丈夫かい?今朝は寒いからねぇ…暖かくして行きなさいよぉ」
たまたま外に出てきていたご近所さんに声をかけられ、美奈は恥ずかしそうに返事をした。
「はぁい、いってきまーす」
「行ってらっしゃい」
「あー布団と一緒に登校したーい」
「それなー、マジ分かりみ深いわ。」
途中から美奈の友人である琴海と合流し、2人でたわいもないことを言い合う。
「今日は特に寒いなぁ、こんなだったら下にヒートテック着てくるんだったわ。」
「えー美奈、まだ着てないの?私なんてヒートテックとタイツにセーター着て、貼るカイロと貼らないカイロどっちも持ってんのに!」
「それで1月とか生きていけるの?」
「無理!あはは!」
寒さでリンゴのように赤らんだ頬。
ジャリ。
「うわ、霜だ。小学生の時、畑に降りてるやつよく踏んだなー」
「分かる、それで足跡めっちゃ付けて怒られたの。」
「分かるー!」
全く実のない会話なのに、喋っているだけで楽しい。
喋っているうちにいつの間にか暑くなってきて、美奈と琴海は違う意味で頬を赤くする。
「あっつ、マフラーはいらなかったかも。」
「絶対マフラーじゃなくて貼るカイロだよ……」
「えへへ、なぜ分かった」
こうやって笑い合える日々。
今の2人にとっては何でもなくて、将来の2人にはかけがえのない日々。
いつか、太陽の光が反射してキラキラと光る霜のような輝きを持つことを、彼女達はまだ知らない。
11/28/2025, 10:08:29 AM