白糸馨月

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お題『言葉にできない』

 大学の講義が終わって、私は同じ学部でサークルも同じ友達とお昼を食べてる。

「私、最近彼氏出来たんだー」
「へぇ、そうなんだ。おめでとう」
「もう、反応うすいよ!」

 そりゃ、反応うすくなるって。だって、一年でもう三人も変わってるじゃん。と言いたくなるのをのみこま……ないんだよな、私は。

「だって、一年のうちに三人目だからねぇ」
「でも、今度は長続きするから!」

 丁寧に巻いたツインテールを揺らしながら友達はすこし頬をふくらませた。

「で、今度はどんな人?」
「あ、そうそう! うちの彼氏イケメンなの! ほら!」

 イケメンは私も好きだ。今まで目の前の地雷系っぽい女は、何人か付き合ってきたが今まで『イケメン』っていうワードは出てきたことがなかった。長続きするかどうかに関しては信用してないが、イケメンには釣られる生き物だ、私は。すこしは期待しようではないか。
 
 しかし、さしだされたスマホの画面を見て私の期待はあっけなく打ち砕かれた。
 プリクラで撮ったから、異常に眼球が大きくなってる男女が二人並んでいる。それはプリクラ特有の効果だからいい。あれは誰がやっても宇宙人と化すから。
 だが、友達の横にいる男は一世代遅れている茶髪で片目を隠していて、黒いジャケットの下はなんだかよく分からない英字が描かれたシャツを着ている。おまけにシャツの胸元になぞの鎖の飾り付き。
 友達が満面の笑みを浮かべて「どう?」と聞いてくる。
 正直、言葉にできなかった。気兼ねない仲とはいえ、人の彼氏を否定するほど私は人間落ちてないつもりだ。
 だから

「ゔぃ……ヴィジュアル系みたい、だね……」

 と返すので精一杯だった。

4/12/2024, 3:59:38 AM