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「は?なんでお前いんの?」
「私居たらなんか悪い?」

私とコイツの関係性に名前を付けるなら、犬猿の仲。
廊下ですれ違う時とか、教室に遊びに行く時とか、どういう状況であれ顔を合わせればとにかく喧嘩。
その場で思いついた語彙をただ投げるだけの稚拙な喧嘩。

何がきっかけで仲が拗れたのか、正直覚えてない。
どうせ大したことない事で意見が食い違って、それからお互い気に食わない奴認定しただけの話。
最早腐れ縁だ。コイツとは切れない何かしらがあるんだろう。

「お前この科目苦手だろ」
「友達が選んだから私も選んだだけだし」
「へいへい、どうせ途中で居眠りして泣きながらノート見せて〜って周りにせがむんだろ?」

どうやら選択科目が被ったらしく、意図しない形で出くわすことになった。
ニヒルな笑みを浮かべながら悪態をつくこの男を他所に空いている席を探す。

その時だった。

「……っあ」

適当にキョロキョロしていたせいで怠った足元の確認。
机の脚につま先をひっかけてしまい、身体が前に倒れていく。そのまま床に顔面ダイブするところまで予想してしまい、思わず目を閉じた。


しかし、衝撃は何故かお腹に入った。
倒れたことによる衝撃ではない。何かでお腹を締められている感覚。そしてそのまま引き寄せられる。
思わず目を開けお腹を確認すると、誰かの腕だった。

「あぶねぇだろ、ちゃんと前見ろ」

いつもなら、まぬけな事した私を見て笑うくせに。
「ダッセー!」って大爆笑するくせに。
なんでこういう時は助けるの。

そっと腕を外しスタスタと席に戻るアイツ。

いつもみたいにからかってくれたら「笑うな」って噛み付いてやるのに、そんな態度で返されると調子が狂う。
今だって、アイツに目が釘付けだ。

私の視線に気付いたのか、顰めっ面でこっちを見てくる。いかにも「なんだよ?」と言いたそうな顔。
普段なら一言物申してるけど、今日はなんか別の言葉を送ってやりたい気分だ。

きっとこれは気の迷い。
でも、伝えなきゃいけない気がして。

「ありがとう」

そんな事を言われると思ってなかったのか、アイツは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
その反応に私は満足感を味わった気がした。

たまには、こういうのもアリじゃない?

3/5/2026, 2:00:19 PM