喜村

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 俺は吸血鬼である。
皆様ご存知、日の光を浴びることができない。
浴びてしまったら最期。そう、最期なのである。
 俺は昔からの言いつけを守って、陽の出ている時は外にはでない。窓際にも近づかないようにしている。
でも、俺にも子ども時代があった訳で。友達もいた。
子どもの時は好奇心旺盛で、できないこともやってみたくなるお年頃。
 ある日、友と陽が傾く前に遊んでいた。
春風がカーテンを翻し、陽の光が友にあたった。
あたって消えた。シャボン玉の歌のように。

 時は経ち、大人になり、たまにあの時窓際にいたらと考える。
 俺の時間は夜。
夜空を見ていると、時たま流れ星が通過する。
人間達は流れ星に願いをすると叶うというジンクスがあるらしい。
もしも吸血鬼でも叶えてくれるなら……
一瞬キラリと光横切る流れ星に、俺は願い事を唱えてみた。


【流れ星に願いを】
※【沈む夕日】の続編

4/25/2023, 12:41:30 PM