1年後にまた会いに来る。
そう言って旅に出た友人は1年と経たずにあっさりと帰って来た。俺がどうしたんだと問い質せば、「お前がいないと毎日が退屈でさ、時間が経つのも長く感じたからそのせいかも」と、こちらの力が抜けてしまうような、何とも呑気な答えを寄越してくる。そんな友人の様子を見て自分が安堵しているのを自覚しながら、「バーカ。なら旅に出るなんて言って、俺を置いていくなよ」と、恨みがましくふざけてみれば「・・・・・・だって、俺、お前みたいになりたかったんだよ」と、こっちが全く意図していなかった言葉を吐き出してきたので、俺は僅かに瞠目してしまう。
こんなこと絶対に言うつもりなんてなかったのに、「俺だって、お前みたいになってみたかったよ」と、ついずっと抱えてた願望を漏らしてしまったら「・・・・・・なんだ、そっか」と、ひどく子供みたいな顔であいつが笑うので、1年後でも、10年後でも、この眩しさだけは変わらずここにあるんだろうなと、俺はまたこいつを羨んでしまった。
それでもこいつがしばらく経って、再び旅に出るなんて言い出したら、きっと俺は止めることもせずに見送って、また1年後でも、10年後でも、こいつの帰りを待っているのだろうと思う。
【1年後】
6/25/2023, 9:28:56 AM