『ぬるい炭酸と無口な君』
『........』
会話が弾まずただただ二人で座って窓越しに空を見上げる。
入道雲が太陽を隠し蝉時雨が降る。
暑いはずの空気は湿気った風に吹かれ
さむいぼが止まらない。
気分を紛らわそうとラムネを口に運ぶもすっかりとぬるくなってなんとも言えない気分になる。
俺が何かしただろうか。君を怒らすようなことをしてしまったのだろうか。
頭の中で必死に理由を探すも思い当たることが無さすぎる。
君の顔を横目で見る。
どこか儚げで、どこか決意に満ちていそうな表情。
俺の好きな顔のひとつ。
けれどそういう雰囲気でも無さそうだ。
「あのね...」
君が口を開く。反射的に上半身を君に向ける。
入道雲が唸り声をあげ蝉時雨は夕立にかき消され始めた。
そんな夏の顔が君の声をもかき消そうとしてきた。
いや、俺が聞きたくなかっただけなのかもしれない。
今年の夏はもう暑さを忘れてしまった。
語り部シルヴァ
8/3/2025, 10:52:59 AM