シャンシャンシャーン♪
シャンシャンシャーン♪
クリスマスイブの夜。
ベルの音が、街中に鳴り響く
今日は、子供たちが一年の中でもっとも待ち望んでいる一日。
どんなに手がかかる子供も、今日だけは良い子になって眠りにつく。
しかし深夜になっても布団に入らず、机に向かって勉強している少年がいた。
彼の名前はツトム。
中学受験を来年に控えた小学六年生である。
「チッ……」
しかしツトムは家の外から聞こえるベルの音に、憎々し気に舌打ちをする。
なぜならば彼にとってサンタクロースのプレゼントは害でしかないからだ
ツトムは自分の意思が弱いことを自覚している。
だからゲームなんてもらった日には勉強そっちのけで遊ぶと思っていた。
しかもツトムには、自分のとこにサンタがやって来る確信があった。
なぜなら自分は客観的に見て『いい子』だと思っていたからだ
ツトムは勉強もさることながらボランティアにも精を出していた。
ボランティアに参加することで、内申点を良くしようという魂胆である。
それ以外にゴミ拾いや困った人を助けるなど、色々な活動を行い周囲を行った。
そのおかげで評価は上々、あとはテストでいい点を取るだけであった。
下心があるとはいえ、どこに出しても恥ずかしくない『いい子』のツトム。
サンタが来るのは必然であった
そのためツトムは、対策を練ることにした。
しかしサンタに来てほしくない子供が少ないためか、調べてもサンタを遠ざける方法は分からなかった。
だからいつ来てもいいよう、机の横に金属バットをたてかけていた。
これでサンタを追い払うのだ。
と、部屋のドアの向こうに、誰かが来た気配がした。
ツトムは、『サンタかもしれない』と思い、バットに手を伸ばす。
「ツトム、入っていいか?」
声をかけてきたのはツトムの父だった。
ツトムは安心して、答える
「入ってきていいよ」
そう言うと、ツトムの父は湯気のたったカップを持って入って来る。
「ココアを入れた。
これを飲んで休みなさい」
ツトムはココアを受け取ると、おいしそうに飲み始めた。
「ツトム、そろそろ寝たらどうだ?
いつもはもう寝ている時間だろ。
寝不足は勉強の大敵、合格するためにも今は寝なさい」
「分かってる。
寝ている間にサンタが着たら大変なんだ
起きてないと……」
「前から言ってたサンタを追い払うって話か……
お父さんが子供の頃は、毎日来て欲しいくらいだったのに」
「今は令和だからね」
「令和は関係ないな」
ツトムの父は少し笑うと、すぐに何かを考えるように腕を組む
「しかし、やはり遅くまで起きているのは感心しないな」
「でもサンタが!」
「そこでだ。
お前の代わりにお父さんが見張っておく。
ツトムは寝なさい」
「それだとお父さんが寝れないじゃんか!
お仕事で疲れてるでしょ?」
「お父さんは大人だから、少し寝なくても問題ないんだ」
父の提案を聞いて、思い悩むツトム。
しばし考えた後、顔を上げて父親を見る。
「分かった。
ボクは寝るから、見張りはお願いします」
「よし来た。
じゃあ、ツトムは歯磨きしてきなさい」
ツトムは頷くと、そのまま部屋を出て行った。
父親は、これで安心だとばかりに息を吐く。
「まったく、サンタを困らせるなんて悪い子だなあ……」
そして歯磨きから戻って来たツトムは布団に入る。
その間、ツトムの父はサンタが入ってこないよう監視をするのであった。
しかし父の頑張りも虚しく、サンタのプレゼントは届けられる。
自分の父親の不甲斐なさに憤怒するツトム。
しかしプレゼントの中身が文房具セットだと知ると、ツトムは飛び跳ねるように喜び、ウキウキしながら勉強を始めるのであった
12/21/2024, 3:38:07 PM