『風に乗って』
風に乗って行く。
風に乗って散って行く。
風に乗って舞い散って行く。
春が終わった。
遅咲きの桜のせいで、今か今かと胸騒ぎの絶えない春が。
白んだ空の下、いっぱいの淡い色彩達に胸が高鳴る春が。
窓辺に可愛らしい花弁が居座って、胸が満たされる春が。
春が終わった。
小夜中、打ち付ける大雨にやめてくれ、と懇願する春が。
晴れた朝、お嬢様気分で桜の絨毯を歩き笑顔になる春が。
あっという間に緑の混じった木に、寂しさを覚える春が。
風に乗って、花が散った。それが春の終わりだった。
風に乗って、爽やかな香りが漂う。それが合図だった。
風に乗って、夏へのバトンが渡された。それが始まり。
始まりは風。
終わりは風。
季節は風。
風に乗って、巡って行く。
風に乗って、季節の欠片が咲き散って行く。
風に乗って、硝子細工の様な美が紡がれて行く。
4/29/2024, 1:47:31 PM