(透明な羽根)(二次創作)
サビ組に遊びに来たセイカの帽子に、綺麗な羽根がくっついていた。
綺麗な羽根は、ミアレシティのあちこちで見つかる文字通り綺麗な羽根だ。陽光を反射しキラキラと煌めいているそれは、ミアレ外の住民たちに人気で、それなりの価値で売れる。小手先の資金稼ぎに羽根を拾い集める者も珍しくなく、セイカもその手の人かと思ったが、彼女は一晩で十数万円稼ぎだす程のポケモントレーナーである。
別の日は、袖に。また別の日は、髪に、綺麗な羽根がくっついていた。
ある日、カラスバはとうとう本人に直撃した。
「なあ、なんでそんな、ハネばっかくっついてるん?」
「羽根?」
どうやら本人は気付いていなかったようだ。その日は左肩についていたので、スマートに払ってやる。ひらひらと落ちるそれは、室内でも綺麗だった。
「これかあ。私、綺麗な羽根を見つけたらなるべく拾うようにしているんです」
「金に困ってんやったら、低利子で貸すで?」
「違う違う、ちょっと前に不思議な羽根を見つけたんですよ」
言うなりセイカは、懐から何かを取り出した。乾燥した葉脈のようなそれは、確かに骨組みだけ見れば羽根である。しかし綺麗な羽根を形作るあの煌めく羽毛が無い。
「何やそれ」
「さあ?」
セイカもそれを見つけたのは偶然だったようだ。よく透かすと、羽毛も見える。どうやらとても薄く、パッと見ただけでは視認できないだけらしい。セイカはそれを、透明な羽根と勝手に呼んでいた。
「これをもう一枚欲しくって」
「ほおん?」
「見つけたらカラスバさんにあげますね。世界に2つだけのものって、何だか良くないです?」
何なら今それを貰ってもいいのだが、手を伸ばした瞬間にセイカは羽根を仕舞ってしまった。お揃いの、しかも何かの羽根とは、子供じみた話だが、セイカは楽しそうだ。ならば、とカラスバのいたずら心が芽生える。
「それ、オレが先に見つけたら、どうするん?」
「そしたら交換しましょ♪」
全く可愛らしい娘である。
11/10/2025, 8:28:24 PM