ストック1

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「良いお年を」

12月31日
近所のおじさんが、例年と同じようにそう挨拶をして去っていく
新年になったら、また挨拶をしに来てくれるのだろう
あけましておめでとう、と
来年はどんな年になるだろう
私はワクワク感を胸に抱きながら、大晦日を楽しもうと心に決める
そういえば、おじさんはいつから「良いお年を」と挨拶しに来てくれるようになったんだっけ?
たしか、私がもう少し小さい頃、越してきたんだったはず
あれ?
おじさんが越してきたのって、いつ?
そんなに年月は経っていないはずだけど
おかしいな
具体的な年が思い出せない
なんか、そんなわけないのに、10年以上経っているような、不思議な感じがする
私は15歳だから、さすがに10年なんてことはありえないけど
でも、そのわりにはおじさんに挨拶された年末の思い出がたくさん、私の記憶の中に存在してる
それぞれ、いつの記憶だったかはわからない
ただ、間違いなく事実として経験したことだとわかる
これは、どういうことなんだろう?
よく考えてみれば、年末に限らず、それぞれの季節の私の思い出は15年をゆうに越えている
しかも、そのうちのほとんどの思い出で、私は15歳か、誕生日を2月3日に迎えたあとの16歳だった
私は、同じ年を繰り返している?
これはいったい……?


……あれ?
私は今、何を考えていたんだったか
なにか大事なことだった気がするけど、思い出せない
まあ、いいか
そのうち思い出すかもしれない


『またループに気づいたか
さすがに、彼女にだけは何度思考を妨害しても度々気づかれてしまうな
これも彼女が主人公であるが故か
だが、ループに気づかれて、脱出などされては……時間を進められては困るのだよ
君たちの日常の世界は、まだまだ長続きしてもらわねばな
目指すものは、国民的な作品なのだから
今は何も考えず、年末年始を楽しみたまえ
どうせいつかは時が進む
それがいつになるかは、わからないがね』

12/31/2025, 11:19:38 AM