みんな、殺された。
たった一人子どもに、経験豊富な先輩たちが殺された。
私以外、皆だ。
たった一瞬で、ここは血の海の化した。
ここで私が足止めしなくては、二手に分かれた上司の部隊に行ってしまう。
それだけは、避けたい。
だから、私は武器を握る。
「ああ、もう嫌だ。こんなに強いとか、聞いてない。」
そんな言葉が口から溢れながらも、私は奮闘する。
相手の動きを見て、避ける。
これが精一杯。
反撃は、期待出来そうもない。
この動きの速さに慣れるしかない。
早く、上司来てくれ。
そう願いながら、反撃できる隙を探す。
どれくらいの時間が経っただろう。
上司が来る前に、勝負は付いた。
私の負けだ。
私の首に、あと1ミリで刃が届く。
私は、死ぬのか。
あと少しで、成人だったのだけどな。
しかし、一向に刃は、私の首に触れなかった。
それどころか、敵は私に背を向けた。
「何故、私を殺さない。」
私は、怒りと悔しみの籠もった声で言い放つ。
敵は踵を返し、私を見た。
「だって、貴方、まだ子どもでしょ。
わたしはね、子どもは殺さない主義なの。」
その声は、まるで幼い女の子のような高い声だった。
私は、何も出来なかった。
先輩たちを守れなければ、自分よりも年下の子どもにも敵わなかった。
ああ、なんと言葉で表せば良いのだろう。
怒りと失望と悲しみと悔しさとが入り混じり、湧き出て止まらない。
心内は、確かに感情が溢れているのに、言葉が浮かばない。
思い出すのは、優しく温かい先輩たちの姿だけ。
私は涙を流し、感情に任せ地面を叩くことしか出来なかった。
3/29/2025, 12:37:59 PM