John Doe(短編小説)

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屋上からの工場夜景


今、はっきりとわかったんだ。

僕には、目が二つもあって、それらはこの世界の色を鮮明に映し出す魔法の瞳であること。
僕には、脳ミソがあり、心があり、綺麗なことも汚ならしいことも考えることができること。

今、はっきりとした。

僕の人生を支えてくれたのは数え切れないほどの本たちじゃない。僕に生きる理由を与えてくれたのは母さんの笑顔じゃない。僕が死ななくて良かったと思えたのは大好きなあの娘との夜じゃない。

今、はっきりとわかったよ。

このビルの屋上から見える、湾岸の工場夜景。ピカピカ光って、まるでSF映画のような未来の建物みたいな幻想的な風景。
これが、この世界で生きる意味だったんだ。

生きる意味は、これだったよ。
ただ、この瞬間、この時間、この空間が、僕が生きるに値する意味だったんだ。
涙が溢れては僕の頬を濡らしていく。

ありがとう、僕の魔法の瞳。

ありがとう、僕を感動させてくれた心。

ありがとう、神様。

ありがとう、地球。

ありがとう、宇宙。

9/15/2023, 9:41:09 AM