「冒頭とか無しに、質問を君に投げかけようか。
なぜ、カナリアは走ってると思うかい?
では、手始めにカナリアは誰か。僕が先に答えてあげよう。カナリアは酒屋でバイトしている小娘だ。
語り手は誰かって、君は僕のことを聞かなくていい。
カナリアは走っていた。
踏めば歪む黒土。その黒土から、月に向かって真っ直ぐ伸びている謎の植物をかき分けて。
されども前に進んだ気はしなかった。
何度も植物を左右にかき分けたが、目の前は緑一色に染まっている。謎の植物は一向に消える気は無い。
そして足は黒土にどんどん嵌っていく。
進めば進むほど、まるで底なし沼のように足が嵌っていく。
ついには足の感覚は無くなる。
まるで……じゃなくて、本当に底なし沼だったんだ。
ああ、可哀想だね。カナリアは。
虚ろな目で絶望したように泣き叫ぶカナリア。
では、ここでカナリアの第2の情報を与えよう。
カナリアは残虐な大量殺人鬼だった。
何百人もの子供を可愛がっては弄び、殺した。
鉄パイプで気絶をさせてから、爪を一枚一枚剥ぎ、第1関節からハンマーで粉砕し、幼い子供の泣く声を聞きながら絶頂する。
さて、ここまで長話でした。君はカナリアに同情するかい?」
9/18/2023, 8:42:31 AM