ミキミヤ

Open App

【特別な存在】

とあるダンジョン近くの町でのこと。

「お前もう冒険者やめろ。才能ないよ」

傷だらけで帰ってきた私に、彼は言った。

「やだ。やめない」

と、私はいつも通りに返答する。彼はそれを聞いて、呆れたようにため息をついた。


彼と私は幼馴染だ。生まれた日も場所も一緒で、親同士が仲良しで、私達は小さい頃同じ景色を見て過ごした。
それが変わったのは、いつからだったか。

かたや私は低ランク冒険者。有象無象の1人。
対する彼は、次期勇者と目される期待の天才。

ダンジョンに潜る度に傷だらけで帰ってくる私に、彼は毎回「もうやめろ」と言う。
彼から見たら、私は羽虫同然の弱っちい存在なわけだから、言われても仕方ない。
実際、私くらいの実力で限界を感じて冒険者を辞めていった人を私自身数え切れないほど見てきた。
でも、私はやめない。やめたくない。

「なんでそんなに強情なわけ」

呆れた彼が訊いてくる。
私は彼の目をまっすぐに見つめる。
綺麗な青色。才能の輝きを秘めた美しい瞳。
ずっとずっと、憧れている瞳。

「まだ追いかけていたいの」

私は一言、そう答える。

私には才能がない。そんなのわかってる。
彼には絶対追いつけない。無理ってやつだ。それもわかってる。
でも、追いかけたいと、その背に手を伸ばすことをやめたくないと、思うことをやめられない。
ものの分別がつく前から、私はずっと彼を追いかけてきた。彼を追いかけることは、私の存在意義なのだ。


彼は「意味わかんねえ」と言いながら、お手上げのポーズをして、私に背を向け、去っていく。

私はその背中を、見えなくなるまで、じっと見ていた。

3/23/2026, 11:03:07 AM