鶯になりたかった鳩

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「愛車」に乗れば どこまでも行ける気がした

この二輪があれば 果てなきところへ行ける気がした

メーターとギアのついた自転車のカゴに

相棒のクマのぬいぐるみを載せて

目に落ちる汗など気にすることなく

ただひたすらにペダルを漕いだ


信号が赤に変わり タイヤはおとなしくなった

青い空を見上げると 魚の形をした雲がみえる



まさにいま 海の中では 見たこともない魚たちが

命を削って 泳いでいる

二度と会うことのない魚たちは 

今この瞬間にも 命を育んでいる

そして 誰も知らぬところで

その命が燃え尽きている

ぼくは寒気がしたものだった


時速30キロメートルを越えれば

メーターがどうなるのか 景色が変わるのか

その答えを求めて 坂道を必死に下る

死んだ魚たちがどこへ行くのか そんなことを

考える暇もなく ただ 必死に漕いでいた



8/14/2023, 11:39:55 AM