星月夜

Open App

いつも通り講義を受けて、前の講義の復習を終わらせて学食に向かい日替わり定食を頼む。
陽のあまり当たらない隅のテーブルにコト、と日替わり定食を置き、座る。
まだほのかに温かいフライをサクッと齧った時。
「ねぇ、もしも明日世界が終わるとしたらどうする?何したい?」
目の前からそんな声が降ってきた。
まさか自分が声をかけられているとは思わず、味噌汁に手を伸ばしズズっと啜った時。
「ねぇ!聞いてます?」
いきなり顔を覗き込まれて、思わず味噌汁を吹き出しそうになった。
だって、いきなり初対面の相手からそんな話題を振られるなんて思わないでしょう?
「僕に何か…?」
誰かと話すこと自体苦手なのに、どうしていきなりそんな訳の分からない質問をぶつけてくるんだと苛立ちを滲ませながらそう尋ねた。
自分でもすごい感じの悪い嫌な奴だと思う。
しかしキミはそんなことを気にするようなそぶりも無くにぃっと笑うと
「だって、気になるんだもん!」
と瞳をキラキラ輝かせた子どものような笑顔を見せた。
あぁ、愛おしいな…。
恋とはするものじゃなく落ちるものだと聞いたことがあるけれど、本当にその通りだと思った。
あの日、あの笑顔を見た瞬間に、僕はキミを守りたいと心からそう思ったのだから。

結局、キミの痛みを僕は受け止めて支えてあげることは出来なかった。
キミを守ることさえ、出来なかったけれど。
あの日の問いに、今なら答えることができる。
「明日世界が終わるとしたらどうする?何をしたい?」
ただ、その時が来るまでずっとキミのそばにいさせて欲しいと。

5/6/2024, 11:02:16 PM