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それは突然の事だった。
「ねえ、私好きな人ができたの。」
「えっ、本当?そっかぁ、遂に私の親友に春が訪れち
ゃったかー。」
私が何処か面白そうな声を出すと彼女は頬を膨らませて
拗ねたような顔をして言った。
「もう、からかわないでよバカ。」
「ごめんごめん。で、相手は?」
「隣のクラスの〇〇君。」
「おお、女子に人気の彼か。うーん、これはまたアドバイスが難しいな。」
「だよね。私如きがって分かってるんだけど、でも
諦められないの。」
「うんうん、貴女はいつも引っ込み思案なんだから好きな男の子を狙う時くらい強気でいかないとね!安心してよ。私が恋のキューピッドになってあげるから。」
「ありがとう!」
彼女は花が咲いたように笑う。胸の中に黒い染みが広がる感覚がする。
「それでね───」
彼女の声が遠くに聞こえる。ああ、辛い。
たった今私は失恋した。当然だ。彼女は格好良くて素敵な男の子が好きなのだ。私は女で親友。
それ以上はどんなに願っても叶わない。ふと窓を見る。
窓越しに見えるのは嫉妬と失恋した悲しみに塗れた哀れな女の酷い顔だった。

『窓越しに見えるのは』

7/1/2023, 1:16:16 PM