佐原369

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題名『嘘つきなカラス』

ある嘘つきのカラスが、人間の童話を聞いてとてもいいなって思ったんだって。

その童話は『裸の王様』

皆さんご存知の通り、裸の王様では詐欺の服職人が「バカには見えない服」と言って王様や国民を騙すものですよね?

そのカラスはさっそく、隣の家に住むヒヨコさんで試してみることにしたんです。

ヒヨコさんは何の鳥の雛か自分で忘れてしまうほど忘れん坊な子で、よく隣人のカラスのことも忘れてしまう黄色が大好きなヒヨコさんでした。

カラスはヒヨコさんの家に行きました、ヒヨコは自分の体を黄色に塗るのに夢中でしたが、カラスが来た時いつも通りポカン?としてました。

カラスは言った「早く飛べるようになりたいんじゃないかな??」その言葉に嬉しそうにぴょんぴょんするヒヨコさん「なりたいよ!」

カラスは意味深に微笑んで続けて言う、「それじゃあ、あの崖に登ろうよ。特別な羽根をあげるからさ」
その言葉を疑う事もなく、ヒヨコさんはカラスと崖に向かう。

崖に着くとカラスはヒヨコさんのふわふわの小さな背中に触り「羽根つけてあげるよ」そうカラスは言ってヒヨコさんの背中をさする。羽根なんてつくはず無いのにヒヨコさんずっと嬉しそうに待っていた。

カラスは終わったように背中をポンとすると、ヒヨコさんは困惑したような表情を浮かべた、羽根なんてついてなかったんだから、でもカラスは言った「弱虫には見えないんだよ。」その言葉にヒヨコさんは、混乱しながらも『弱虫』という言葉に反応して少し躊躇うように崖の方に目を向けた。

カラスはヒヨコさんを急かすように続けた。「もしかして…ヒヨコさんは羽根が見えなかったのかな?笑あーあ、弱虫だったんだ?」その言葉に少し焦りが増したのかヒヨコさんは崖の方へと一歩一歩進んでいく、「そ、そんな事…」

その様子にカラスは笑みを浮かべながら、ヒヨコさんを更に煽るように続ける。
「ほら、弱虫じゃないんだろ?早くいきなよ、」
ヒヨコさんは進んでいく、あと数歩…

急にカラスは黙った、目を逸らした。
するのヒヨコさんはあと一歩の所で振り返って言った、
「怖いよ…ぼくは弱虫だから羽根なんて見えないんだ」泣きそうな声にカラスは更に声が出なくなりそうになり、ただ「帰ろう」辛うじて口パクのように言えた言葉だった。

帰り道、涙でぐしゃぐしゃのヒヨコさんは自分を責めるように続けている「ぼくは弱虫なんだ…ごめんねカラスさん、せっかくしてくれたのに…」その言葉にカラスは少しの間を置いて口を開いた「俺のことなんだって思ってるんだよ」その声は少し疲れたような何かに苦しんだような、そんな声で。
ヒヨコさんはその質問に、戸惑って言葉を紡ぐ「カラスさん…えっと…なんだっけ…ごめんね、すぐ、思い出すから…えっと、」

カラスはヒヨコさんの頭を撫でた。
「ごめんごめん、もういいから」カラスはそう言った。

その2羽の様子は"親子"のよう、そしてカラスの表情はどこか悲しみが滲んでいただが、その手つきは慣れたもので涙の跡が見えようと、どこまでも穏やかなものだった。

                 佐原369

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(下は読まないで良いです。心情整理的なものを下でやっていただけですので、読みたい方だけどうぞ)

事実編(心情整理)

そう2羽は親子だった。記憶障害をもつヒヨコさん、親の顔まで思い出せなくてカラスはただの隣人としか思ってないのだ。
裸の王様とい童話を知ったカラスは、ヒヨコといっしょに居ることが内心辛かった、いくら教えても忘れてしまうからだ、それで裸の王様に出てくる「バカには見えない服」という嘘を使って、ヒヨコを騙して、純粋なまま何知らないまま「終わらせてあげたい、終わらせてくれ」と願った…だけどいざとなるとそれは出来なかった。

ヒヨコが生まれた時のことを思い出したからだ。

どんなに未来が辛くても、亡くせないものだった。
なんで、あの日の希望を、守ろうと思ったものを自分で壊そうとしているのか、なぜこんなことになってしまったのか、あぁ、ただ単純に愛している。
それなのに傷付いてしまう、いや愛しているから忘れられるたびに痛くなるのだから

終わらせてあげたかった。
終わらせたかった。

けど、いざとなると子を目の前で失うかもという鈍く鋭い痛みの恐怖に勝てなかった、尽きたと思っていたのに愛情は溢れてしまった。
生まれた時の事を鮮明に思い出してしまった、ありのままで育ってほしい、幸せになってほしい、ずっと笑っていてほしい、そんな気持ちがまた押し寄せて来たんです。

弱かったのは、弱虫なのは、カラス自身でした。

親として忘れられてしまう、いくら教えてもすぐに忘れてしまう。食べ物の食べ方も時々忘れてしまうほど、ヒヨコさんの記憶障害の症状は酷い時もあった。カラスは仕方ない事であると分かっていても辛かった。不自由な体で産ませてしまった事、普通の子と同じでないこと、密かにずっとヒヨコさんに申し訳ないという気持ちと、なんで家の子なんだという酷いような複雑な気持ちでいた、でも、ヒヨコさんはある日幸せって言ったんだ。

「木漏れ日の下で寝ると気持ちよくてさ」ってヒヨコさんが嬉しそうに話してくるの、
「なんで俺にそんな話するの?親に話せばいいじゃん、」カラスはヒヨコさんが幸せと言った事に驚きながらもそれを隠し皮肉のようにヒヨコさんが親だと思い込んでる鳥を見た。
だけどヒヨコさんは「カラスさんと話すの楽しいの」小躍りしながら言ったんだ、必然とカラスの目は涙で濡れていた、何気ないそんな言葉に心が複雑に痛んだのを今でも忘れられず頭の中で飽和している。

だけどカラスは我が子を手にかけなかったことに安堵しつつ、これからの不安を考えるのです。
だってこれからも、ヒヨコはカラスを親とは思わず、他の鳥を親だって言い続けるだろう。
そして、これから出来るヒヨコに出来る友人や恋人達も、この忘れられてしまう痛みを知る。そしてそれが耐えられないと言って離れていってしまうだろう。いつかカラスが死んでしまったとき、ヒヨコはひとりぼっちになってしまうのだろうか、生きていけるのか、

そんな不安が心にしがみついている

たかがの小さな希望に何を期待しても意味がないのか、そんな事あるのか分からない、もう全部どうでもいい「ただ今だけは、純粋に全てを愛したい」それだけなのに叶わないのがカラスにとって一番辛いんだ、

泣き叫びたいと思うたびに堪える喉は痛かった。


そして、でもいつか真実を知った時に一番後悔するのは誰でしょう。

目の前にいた親を親じゃないと言い続けた重みを背負うのは誰でしょう。

他の鳥を親と言い続けて黄色に憧れ続ける、そんな姿を本当の親に見せ続けていたのは誰でしょう。

そう、ヒヨコさんですね。

ヒヨコさんは、自分がただ忘れやすいだけだと思い込んでいる、記憶障害なんて思いもしていないだろう。無意識に大事な人を傷つけてるなんて…思いもしないだろう…何も悪くなんてないのに、

もうどうすればいいかなんて、この感情の名前を教えてくれって検索したって出てこない。
もう考えたくない、純粋に愛したかった。もう純粋じゃなくても辛い愛だったとしても…どうすればいいかなんて誰も教えてくれない。

だからカラスは最終的に親でないと言った。ただの隣人だと言った、愛してないなんて言った、疲れたなんて勝手に終わらせようとした自分を悔やんで

嘘付きなカラスは、また無理矢理な嘘を付き続けることを選んだんです。どうしようもなくてもいい、無理矢理な嘘でどうにかなるなら、いくらでも嘘を吐いてやるから、誰か助けてくれ…。

11/9/2025, 12:00:16 AM