さやは

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『友達をたくさんつくろう!』

 小学四年生の頃の学級目標。
 たくさん作ったらなにかいいことがある?
 逆に作らなかったら悪いことでもある?

『つくらないひとはおかしい』

 という概念が当時のクラスの中でできてしまった。


 俺は人と関わるのが苦手だった。今でもそうだ。人と関わろうとしても、俺には協調性がないから何もわからない。気づいたら失言ばかりしていて周りから人がいなくなる。一人でいるほうが正直言って楽だ。

 そんなある日のこと。
 クラスの学級委員の田中美央が話しかけてきたのだ。
「ねぇ、キミ」
「…………何」

「私と友達にならない?」

 …いきなり何を言っているんだこの人。俺には理解ができなかった。
 とにかく俺は断った。一人でいたいから。それでも田中美央は話しかけてくる。何度も「友達になろう」と言ってくる。
 はぁ、しつこい。
 俺は一人でいたいんだ。話しかけないでほしい。
「学級委員の田中さん」
「!?な、何…?」
「俺は何回言われても友達になんてならないから。一人ている方が楽なんだ」
「………………じゃん」
「え?」
 田中美央は何かを小さくつぶやいた。俺は思わず聞き返す。
 だが、聞き返したことを後悔した。
「名前覚えてるってことは友達じゃん!」
「っ、はぁ?」
 予想外の返答が来たのだ。友達の基準が低すぎじゃないか?
「これからよろしく!鈴木海斗くん!」
「チッ…。」

 一方的な友達関係が生まれてしまった。
 正直言って最悪だ。でも。
 意外と「悪くない」と思ってしまった。
 友達という関係性がなんだかんだ言って一番難しいのではないだろうか…。


【友達/2023.10.25】

10/25/2023, 10:47:46 AM