『案山子の夏』
金色の太陽が山に沈んでゆく
昼間の鮮やかな緑の水田も
今はなんとなく物悲しい色になっている
赤い空にイタズラからす
みんな山に帰っていく
目の前では男の子が走ってる
遠くでポツリポツリと光がみえて
きっとどれかがその子の家
「日が沈む前に帰らなきゃ。」
暗くなってゆく畦道を
少年は走りつづける
イタズラからすは帰っていく。
少年も帰っていく。
だけど僕だけ帰れない
田んぼの真ん中で
両手を広げて立っているだけ
僕の頭の上でいつのか分からない麦わら帽子が
カサカサと風で音を立てている
僕と麦わら帽子。
二人きりの夜はもうすぐだ
8/11/2022, 1:00:36 PM