檸檬味の飴

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キュッキュッと、油性ペンと紙の擦れる音が聞こえる。
四角の枠に被せるようにして二つの赤い線を交差させた。

「〝お迎え〟……」

神谷ランという、一人の少女が、その四角の枠の中に書いてあった赤い文字をそっと呟いた。

もぬけの殻になってしまったこの部屋。
ここのシスターに拾われてからすでに16年という月日が経過し、それも今日で終わりと言うわけだった。

「ランー! ご飯だよー」

扉の外から少し籠るような声が聞こえた。
それも元気な少女の声だったが、ランよりも無邪気な声だった。

「はーい、今行く」

持っていた油性ペンを机の上に乱暴に置いて、すぐ持っていけるように扉の近くへ荷物を移動させてから部屋を飛び出した。



お題:カレンダー 2024/09/11

9/11/2024, 1:34:40 PM