酔生

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距離
 月は遠い。しかし、唯一近づける日がある。それは、満月の日。私は窓を開け月を誘い込む。壁に映る淡い輪郭。私はそれを手でなぞり、妙な感覚が指先を駆け抜ける。まるで月と一体化したような感覚に息が少しだけ浅くなる。
 月は何も拒まない。揺れるカーテンの隙間から、光の滴が床を塗らし、冷たい抱擁で私を包み込む。言葉もなく、ただそこにいるだけで月は私の孤独をそっと溶かしていく。

12/1/2024, 11:12:42 AM