谷折ジュゴン

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「ここではないどこか」

子どもの頃は夢見がちだった。色とりどりの繊細な花が咲き乱れる大空や野山を空想の生き物と共に駆け回る、現実を離れた空想の世界に浸っていた。

ここではないどこかの街を造り、架空の人物に名と役割を与え、この人物たちの1年後はどうなっているだろうかと妄想する。それが私の日常だった。

ある時、妄想を文章に起こそうと思いたった。画力は壊滅的である私でも、言葉ならどうにか表現できるだろうと浅はかな考えで物語を書き始めたのだ。

だが、全くの素人が一から物語を完結させるのは無茶なことだと、この時痛感する。

書きたいことは沢山あるのに描写できない。言い回しが拙い。あれこれ書いてストーリーに一貫性がない。 そもそも、起承転結すらまともに構成できておらず、発想もオリジナリティーがない。展開の意外性がない。

ないないづくしの駄作になった。いまだに完結できずにほったらかしのため、登場人物はひとつの場面で立ち止まっているはずだ。

描き出した理想の君と最後に会った日はいつだったか、造りかけの世界はどこへ行ったのか。もはや覚えていないほど時間が経って今に至る。

そうして、たかが趣味とは言え自分で始めたことだ。挑戦と失敗と成功を繰り返し完結させたい。そう思うようになった。

たとえ下手の横好きだとしても、始めたことを続けることに意味がある気がするから。
私はもう逃げない。

6/28/2024, 4:22:45 AM