『光り輝け、暗闇で』
私は、小学生の頃に男子の悪ふざけで狭い場所に閉じ込められたことがある。
暗い場所に訳の分からないまま閉じ込められて出られなくなってパニックになっていた時、中学生だった兄が見つけ出して助けてくれた。
兄は私を見た途端、力いっぱい抱きしめて“ 無事で良かった”と言った。
その後、兄は悪ふざけじゃ済まされないと学校側に男子達がやったことを包み隠さず話して、相手が耐えられなくなり泣き出すぐらい私の代わりに怒ってくれた。
でも、私はその日から閉所恐怖症になってしまった。
そんな私を家族は心配してくれた。もう、あの学校に通えないと判断した家族は私のために引っ越すことを提案してくれた。
引っ越すと言っても隣町に越すだけなので仲の良い友達とは何時でも会える。
私は少し考えてから引っ越すことに決めた。
あんなことをしたクラスメイトのいる教室には戻りたくなかったから。
―――数年後。
私は、新しい環境にすぐ馴染み、仲の良い友達とも巡り会えた。閉所恐怖症は今も治らないけど、クラスメイトも皆良い人ばっかりだし、仲の良いクラスなので満足している。
兄は希望の大学に入るため必死に勉強している。
実は私には、兄に言うのが恥ずかしくて言えていないことがある。
あの時、閉じ込められた時に助けに来た兄が一瞬暗闇に差す一筋の光に見えたのだ。
あまりにも光り輝いて見えたからその光を見て安心してしまった。
たしかに兄は明るい性格をしているけれど、あの光は性格からくるものではなく、私にとってヒーローのように見えたのかもしれない。
私は……兄には今のままでいてほしい。
ずっと、ずっと暗闇でも光り輝くことの出来る存在でいてほしい。
5/15/2025, 11:05:22 AM