牧原 牧夫

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主人は大きな箱を僕の前に置いた。
「今日からよろしくな」
真っ白で角が整えられたそれは縦にながく、主人が一抱えするくらいだった。
主人は箱の向こう側から僕をのぞき込んでいた。

その夜、主人は箱の蓋を1枚ぺろりとめくった。
中身は僕への贈り物だと思っていたけど蓋はあいていないみたいだ。

毎日主人は蓋をめくる。まだまだ中身は出てこない。

ある日主人の手元が狂ってはこがぽさんと落ちてきた。
ちょうどはこが半分くらいの長さになった時だった。
箱は真ん中でぽっくり折れて地面に落ちてちょっとのところで繋がっていた。

箱は箱じゃなかったんだ。
断面はみっちり詰まった箱はただの紙の束だった。
僕はその文字を見て何も言えずにいた。

そこにあったのは僕の名前。
そして残り100日/365日という文字。

これがゼロになったら僕はどうなるんだろう。
僕は不安な感情を主に向けた。

「怪我はなかったかい?まだ時間はたっぷりあるからね」

その日はどんどん近づいた。
紙の束は薄くなり、そのうち間違えて捨ててしまいそうになるほどだった。
主人は時々寂しそうな顔はしたけれど躊躇いなくぺろりとめくった。
あと5回くらいめくったら【そこ】についてしまう。

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9/11/2023, 10:58:32 AM