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伝える以前から、玉砕していたのだ。
ああやって目の前に映る光景、その親しそうな雰囲気をまとった二人から、とある「真意」を察する。

他人の空似だと、都合よく忘れてしまいたかった。
あれからどう帰路に着き、こうして自室まで戻って来られたのかまでは分からないものの、きっと抜け殻のような足取りをしていたとは思う。

それでもコートの一枚すらも脱げないまま、ぼふん、とベッドに寝転ぶ。
何一つとして気持ちは乗らず、手がつかなかった。
そんな投げやり気味な行動を取ろうとも、まだ冷静な思考を保ち司る私自身が、内側から見下ろしている。

なにかから醒めていく感覚が、胸の奥で広がる。
勇気を振り絞って購入した“贈り物”は、まだ今も机の中で出番のときを待ち続けていたというのに。

【届かぬ想い】

4/15/2024, 2:59:27 PM