一匙

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夢と現実

夢はどこか現実の苦しかった一場面を舞台に描き出す。夢さえ過去の現実を残酷なほど綺麗になぞるのだ。こうだったら良かった、ああすれば良かった、そんな声は夢には届かない。

目覚めたときには汗をびっしょりかいて涙なんか小さく流している。たかが夢だ、たかが夢なのに。頭はそんなことも覚えていたのか、とどこか他人事のように関心して夢を受け入れる。頭の見えない場所で忘れないように保管している。忘れていいのに、そんな記憶捨ててしまえばいいのに。

夢は過去との戦いなのだろう。いつだって現実に過去からはなれた今に、生きている世界に嫌でももどる。生きてきた日の数だけが勝ちだ。必ず覚めるものだから大丈夫なのだ。いつかとてつもない大きな記憶をつめこんで保管場所から過去の居場所をなくしてしまおう。そのくらいの気持ちで夢から覚める。悪が一番嫌うのはきっと希望だ。

12/4/2022, 4:00:16 PM