ミカン缶

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 雨降る街の中、道の端の電柱に、傘が一本、何かを守るように開かれたままで置かれている。
 傘の下、タオルの敷かれた箱の中で、小さな黒い塊が6つ、微かにうごいている。隅にいる塊が小さく『にゃお』と鳴けば、それに呼応するように『にゃお』『にゃお』と声が上がる。
 雨降る街の中、通行人は誰もいない。
それでも小さな生命達は、必死に生きようと、まあ『にゃお』と鳴いた。

『にゃお』『にゃお』
 母親を呼ぶように。

『にゃお』『にゃお』
 誰かに気づいて貰えるように。

『にゃお』『にゃお』

『にゃお』『にゃお』

『にゃお』『にゃお』……



 雨が上がり、街に光が降り注ぐ。
 傘を閉じた通行人は、腕の中にあるダンボールをしっかりと抱え直し、中にいる塊をさらりと撫でる。まるで壊れ物を扱うかのような、暖かなその手に答えるように、小さく黒い塊は、大きく『にゃお』と鳴いた。
 

[新しい家、新しい家族。もう雨に濡れることはない。]

11/15/2024, 5:41:43 PM