そう言えば、昔飼っていた犬の名前は評判が良くなかったな。
生まれたばかりで、か細い泣き声を上げる我が子の顔を妻のベッドに腰を下ろして眺めている時に、ふと思い出した。
なんて名前を付けたんだっけ。
「よしよし」と我が子を抱き上げると、小さい割にズッシリと重みのある、その身体を両腕で包み込む。
この子は将来ビッグになるぞ、なんたって妻と俺の子なんだから。
「名前はもう決めましたか?」
産後で少々やつれた顔をしている妻が微笑む。
「いや、顔を見てから考えようと思ってたから、
一番最初のプレゼントだからね、最高なのを贈りたいじゃないか!」
何も思い浮かばなかっただなんてバレたら、命名権を剥奪されてしまう……。
「良い名前を付けてくださいね、奇をてらうようなものだけは「わかってるとも!」、お願いしますよ?」
胡乱げな妻の目に背中を向けて、ほにゃほにゃの我が子の顔をしげしげと見つめる。
まだ、どちら似かはよくわからないが、何となーく妻よりの顔立ち。よかった。
これはハンサムでビッグな男になるに違いない!
それならやっぱり、勇ましい名前が良いよな!
そう言えば、あの犬はオスなのに臆病で自分よりも遥かに小さな犬にすら弱腰だった。
まて、今は我が子の名前を考えねば!
それからちょっとマヌケで、自分で隠したおやつの骨の在処を忘れて、よく狐に取られていたっけなあ。
……そうだ、思い出した!
「ピケマル「却下です」ちがっ、違う!今のなし!ノーカン!」
結局、妻が名付けた。
テーマ「最悪」
6/6/2024, 7:30:46 PM