まよなか

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ふと瞼を開くと、真っ暗な空間に立っていた。
いや、もしかしたらここは真っ暗なのではなく、真っ黒な空間なのかもしれない。しかし今の状況はどちらも同じようなものだとぼんやり考えながら、自然とその先の見えない空間を歩き始める。ここが真っ暗なのか真っ黒なのか、それはさほど重要では無いように思えたからだ。前に進まなければならない。

しばらく歩いて、突然、何も無いところで転びそうになった。視線を下に向けて慌てて踏ん張ると、硬いものに頭をぶつけた。
それは扉だった。突如目の前に現れた金に輝く派手なこの扉は、真っ暗な空間で明らかに異様な雰囲気を醸し出している。
試しに全身を使って体当たりするように押してみるが、まるでビクともしない。

「救いたかった世界があった」

いきなり聞こえた声に驚きながら、声がした方を見る。扉があった。その声がした扉は金の扉とは違う、明らかに年季の入った、老朽化の進んだボロボロの扉だった。扉の隙間から見える「向こう側」は、暗闇に包まれている。

「守らなければならない人たちがいた」

反対を見るとまたしても扉があった。扉は煤で汚れた跡があり、扉の「向こう側」はゴウゴウと燃え盛る炎に覆われている以外に何も見えない。

「思い出せないのなら、それでもいい」

「新しい世界として繰り返そう」

金の扉に向き直ると、扉には金に輝く取っ手が着いている。そこでなんとなくこれは引くのかもしれないと考えが浮かんで…。
何故か漠然とした不安な気持ちも同時に湧き上がらせながら、取っ手を力強く掴んで引いた。


「成功するまで、何度でも」




「まだ知らない世界」
2025/05/18

5/17/2025, 6:00:04 PM