月夜
「お母さん、今日、星が見えるよ。あっ、月も綺麗。」
車を降りた娘が言った。
「そうだね、今日は雲がないからか、星がたくさん見えるね。」
そんな言葉を、毎日交わしていた。
学校の部活のあと、塾に通っている娘のお迎えの時間は21時過ぎ。
家に着くのは22時。
地方の田舎の町では、電車もなければバスも遅くまで運行していない。
私の車での送迎が、毎日当たり前の生活だった。
いつも月や星が見えるわけではない。雨の日や曇っている日はもちろん見えない。
見えない日でも、家に着いて車を降りると、娘は空を見上げる。
今思うと、空を見上げて月や星が見えたと二人で交わす、そのたった一言二言が、娘の学校生活の、部活の、塾でのプレッシャーや重圧からの解放に繋がっていたのではないだろうか。
今、娘は独り立ちして一緒に暮らしていない。
夜、月や星を見ることも少なくなった。
今日の月は平凡な月だけど、携帯電話で写真を撮って娘に送ってみた。
娘からも返事が来た。「私も見たよ。」と。
3/7/2026, 11:02:35 AM