憂一

Open App

『忘れられない、いつまでも。』

ある秋の日の夕暮れに、
1人の少女が絵を描いた。
窓から見える丘の上、
高く聳える教会を
紙いっぱいに描きあげた。
真白い壁に青屋根の
木製扉を誂えた
厳かさがある教会であった。

その教会がまさに今、
私の前で燃え尽きた。
銀の食器を狙っていた
野蛮な賊の点けた火が
燃え広がって焼け落ちた。

少女が描いた絵の中に、
その中だけに教会は
今も寂しく建っている。
あの教会のある丘を
忘れられない、いつまでも。

5/10/2024, 12:21:47 AM