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題 脳裏

えぇ、えぇ。今でも鮮明に覚えていますとも。
夜中にばたばたと、騒がしく家に上がり込んだと思いきゃ次には私に縋りつき、涙目で殺してくれだなんて言うんですから。

あの時の彼は、限界だったのでしょうね。
目の焦点がろくに合っておらず、私を見ているようでそうでないようでした。
生命力に溢れていた瞳は濁り、光が灯ってはおりませんでした。


あぁ、お願い致します。私を殺してください。
何とか今まで生きてきました。人様に自慢できる生き方をしてきました。
両親。先生。友人。同僚。上司。
皆々様へ好印象に映るよう、思考して配慮してみたりいろいろ私なりに頑張りました。

しかし、そう周りばかり気にしていたからなのでしょうか。自分を出すということをあまりしなかったせいか将来、というものが全くもって検討つかないのです。

考えて。考えて。考えて。けれども浮かび上がるのは暗闇ばかり。
不安だ、怖い。辛い。嫌だ。どうして何で。
少し先に生きる自分の姿が想像できない、もしや道端で野垂れ死ぬだなんてこともあるのだろうか。

あぁ、嫌だ。
生が怖い。己の首に手を伸ばすも、自ら命を達なんて度胸は私にはない。
情けない、情けない。
最後に人様に迷惑をかけざる負えないだなんて。


はい。今でも思い出せます。
迷子の幼児が、不安で不安で堪らないというように抱きついてくる姿が。

彼はやっと解放されたと、安心したようでした。

11/9/2024, 10:45:51 AM