漂泊

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部屋の片隅で

 年末の掃除で久しぶりに箪笥やらベッドやら退かしている。窓から差し込む光にホコリが浮き上がり、華麗に宙を舞う。ファンタジアの世界だ。花のワルツが脳内再生されている。わたしはなんと美しい世界に生きているのだ、と感動している。裏腹に、自ら進んでモノの見方を変えていくと、時に世間一般の認識とずれすぎてよくわからない状態になっている、と批判する自分も身を乗り出してきている。掃除は手を動かして雑念を払えるはずなのに今日は上手く集中できない。久しぶりに見た家具と壁の隙間に足を踏み入れ腰を下ろす。壁に寄りかかり頭を後ろに逸らしたら、当たり前だがゴツンと音が鳴りじわじわ痛くなる。何度か打ちつけても何も変わらない。ただ頭が痛いというだけのこと。現実を生きているのに現実味がなくて、いつかこの夢から覚める日が来るのだろうか。煌めくホコリを息で吹いてみる。押されて浮上したり横に逸れたりしているが、いつか床に落ちることに変わりはない。それならばと、すっかり重くなった腰を上げ花のワルツの旋律を鼻先でなぞりながら、ようやく掃除機に手をかける。年末の掃除を終わらせるために。

12/8/2024, 2:40:31 AM